欧米諸国では、美しく白い歯やきれいな歯並びはとても価値あるものとされ、社会的なステータスを表すものにもなっています。テレビに出る、日本以外の各国の為政者のお口を注意して見てください。歯並びも綺麗だし、銀歯が1つも入っていないことに気がつくでしょう。
歯が汚いことが就職にも影響したり、自己管理できていない人だという印象を与えて、仕事の営業成績にも影響を及ぼすぐらいです。そのため多くの人が歯を美しく健康に保つために、常に高い意識を持っています。
また欧米では、予防や歯のクリーニングのために歯科医院に通う方が98%、治療のために通う方は2%といわれています。しかし、なんと日本では98%の人が治療のために歯科医院に通っているのです。
虫歯治療で銀歯を選ぶことが当たり前になれば、虫歯ができるたびに銀歯が増えていってしまいます。銀歯以外の詰め物やかぶせものは自費のことも多いため、保険内の治療中心で進めていると、口の中が銀歯だらけになってしまうことも珍しくありません。
日本で「銀歯」と呼ばれているものは、金と銀とパラジウムの合金でできていて、日本にしかないものです。国民皆保険制度のために最低限の歯の機能の回復ができる、安くて加工しやすい銀歯として1956年(昭和31年)ごろ生まれたものですが、最近はこの銀歯による悪影響も注目されてきています。
懸念されている3つのリスクについて、以下で解説します。
口腔内には細菌が何百億と住んでいるのに加え、銀歯は日々熱いもの、冷たいもの、酸やアルカリの影響、そして咬合力を受けるなどの、過酷な環境に置かれて常に不安定でいます。そのため銀歯は劣化しやすく、傷つきやすいのです。
そして銀歯の表面から金属がイオン化されて溶け出すことで、体の中の蛋白質とくっつき、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
金属アレルギーは口の中の異常だけに限らず、体全身の異常をきたす可能性があります。手が赤くただれたり、全身にぶつぶつができたりすることもあるのです。
銀歯を入れてすぐに異常が出る場合だけでなく、何年もしてから体に異常が出てくることも多く、原因不明の皮膚病だと思われることがあります。
とくに銀歯に含まれているパラジウムという物質はアレルギーを引き起こしやすく、パラジウムに対してアレルギー反応を持つ方は100名中20~30名ほどいるといわれています。
銀歯と歯は歯科用のセメントでくっついていますが、正確にいうとぴったりとくっついているわけではありません。銀歯を入れる際に歯との隙間をセメントで埋め、セメントと銀歯の摩擦力でくっつけているだけなのです(合着と言います)。
保険治療では型とりの精度にも問題があります。条件を全て揃えて同一部位に二つの銀歯を作った実験をしました。それぞれの模型では完璧に合っているものでも、模型を入れ替えるとお互いに入りません。ですが、この二つはどちらも実際の歯にはまりました。つまり、型が変形していたため出来上がった模型も変形しており、実際の歯を再現していない模型で作られた修復物が出来上がってしまうのです。それなのにこれらが実際の歯にはまるということは、出来上がった修復物がガバガバであることになり、そこを埋めるのに分厚い歯科用セメントで合着するしかなくなるわけです。
しかもこのセメントは湿度が高い口腔内で容易に劣化し、空隙を残します。
そこへ入り込んだ虫歯菌により、また中に虫歯がひろがってしまうケースも珍しくありません。奥の方のセメントも次第に劣化してくるので、古い銀歯の中で、元々の歯が真っ黒になっていたといったこともよくあります。
銀歯の下の虫歯は発見しづらいですし、レントゲンにも写りにくいのでなかなか発見しにくいのも事実です。神経がない歯の場合には症状も出にくいため、定期的な歯科検診を受けていない場合は、歯を残せないほどぼろぼろになってしまうこともあります。
このような状態を避けるためにも、定期検診は重要なのです。
一方、セラミックのかぶせものや詰め物は歯やセメントと相性がよく、ぴったりくっついているため、銀歯に比べて再び虫歯になるリスクは格段に少ないです。
銀歯の表面は傷がつきやすいだけでなく素材そのものに帯電性があるため、その小さい傷に口の中の菌がたくさん寄ってきます。銀歯と歯茎の境目にも歯周病菌やたくさんの菌がたまりやすく、歯茎は細菌から離れたいので銀歯から距離をとるようになり、いわゆる「歯茎痩せ」を起こします。銀歯を入れてから歯周病の進行が早まったりもします。
奥歯に銀歯を入れて数年したら、歯茎が腫れたり歯周病で歯が揺れてきた、という経験がある人もいるかと思います。
銀歯の周りは特に汚れや菌が溜まりやすいので、歯ブラシ以外にも歯間ブラシやフロスを使い綺麗に歯を磨き、定期的に歯科医院での健診やクリーニングを受けていく必要があります。銀歯と歯茎の境目が菌の住処になっていると、口臭の原因にもなります。
保険適用によって日本の歯科治療は安く、誰でも手軽に受けられるという利点もありますが、上記のように実は銀歯には様々なリスクもあるのです。保険治療は最高の治療ではありません。リスクがある点もよく理解した上で、銀歯にするかセラミックの治療をするかを選択するのも大切なことです。
すでに口の中に銀歯がある場合は、定期的な歯科検診と毎日の丁寧な歯磨きをすることが必要になってきます。そしてなにより、虫歯のない健康な口腔内を目指し、予防に力を入れることが健康的にも経済的にも最も重要です。
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